タイトルよりも内容で決まる!文書作成時に気を付けたい印紙税


契約書や領収書などを紙面で作成した場合に検討が必要となるのが「印紙税」です。

この印紙税という税金の存在は把握している方は多いと思いますが、「業務委託契約書には貼る必要がある」「領収書にも貼る必要があるが5万円未満であれば不要」といった認識の方も多いのではないでしょうか?

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ここで気を付けなければならないのが、「契約書だから」「領収書だから」という点です。
実は、印紙税が課される「課税文書」となるかどうかは、文書の題名(タイトル)で決まるのではなく、その文書の内容で決まります。

「領収書」ではなくても領収書と同様に扱われることもある

特に注意が必要だと思われるのが、印紙税額一覧表の第17号文書として定められている「金銭または有価証券の受取書」に該当する場合ではないでしょうか。
※正確には「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」と「売上代金以外の金銭または有価証券の受取書」であり、それぞれ税額が異なります。

この17号文書に該当するのは一般的には「領収書」ですので、「領収書」というタイトルの文書で、記載されている金額が5万円以上100万円未満の場合には200円の収入印紙を貼って消印することで印紙税を納付する必要があります。

しかし、先述の定義を見てみると、実は第17号で示している文書は領収書に限定したものではありません。
これは、たとえ「領収書」というタイトルではなくても、”金銭または有価証券の受取書”に該当する文書であれば、17号文書に該当し、印紙税が課税される可能性がある、ということです。

こんな文書でも課税文書となる可能性が

たとえば、以下のような文書を取引先に送付したとします。

株式会社○○
△△様

拝啓 盛夏の候、貴社におかれまして、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。格別のご交誼にあずかり、厚くお礼申し上げます。

さて、先般ご請求いたしました2022年6月分のコンサルティング費用につきまして早速のお支払いをいただきまして誠にありがとうございました。
2022年7月15日付けで確かに拝受いたしました。

引き続き貴社のご要望等につきまして弊社一丸となり誠心誠意ご対応させていただきたく存じますので、今後とも変わらぬご厚誼のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

敬具

2022年7月20日
□□株式会社
東京第二営業部 契約 ミカタ

この文書を作成した側としては、あくまで入金に対する御礼と引続きの発注をお願いする文書という意図であり、通常「お礼状」と呼ばれるような種類のものであると思います。

お礼状であるという認識ですから、領収書は別に発行(または振込明細書を領収書に変えて)していますし、過去数年にわたり株式会社○○以外の取引先にも同様の文書を送付しています。
当然、収入印紙は貼っていません。

しかし、文書の内容をよく読むと、「請求済みの2022年6月分コンサル費を同年7月15日に受領した」ことが記されています。

これにより、この「お礼状」は「金銭の受取書」に該当する可能性がでてくることになり、つまりそれは17号文書として印紙税の課税文書となる可能性もでてきたことになります。

また、上記文書には実際に受け取った金額の記載がないため、「金銭の受取書ではない」、または「非課税だ」と思うかもしれませんが、受取金額の記載がない17号文書の場合の印紙税額は200円であると定められていますので、金銭の受取書であり、また非課税ではなく課税文書である可能性が高いです。

よって、上記文書には200円の収入印紙を貼って消印をしなければならないと考えられます。

※さらに言えば、本来であれば5万円未満の領収書であれば非課税となるところが、実際には5万円未満の受取りであったとしても、金額の記載がないことにより200円の課税文書になってしまっています。

文書の数が多いと過怠税も高額に

□□株式会社が上記文書を「お礼状」だと考えていたため収入印紙を貼っていなかった場合、印紙税の不納付となり、過怠税が課される可能性があります。

この過怠税は、「納付しなかった印紙税の額」と「納付しなかった印紙税の額の2倍に相当する金額」の合計と定められていますので(印紙税法20条1項)、簡単に言うと「納付しなかった印紙税の3倍の金額」になります。

仮に□□株式会社が創業から現在までに上記のような文書(印紙税不納付)を各取引先に合計500通送付していた場合、

(印紙税過怠税200円 × 3倍) × 500通 = 300,000円

30万円の過怠税が徴収されることになります。

課税文書になるのか確認が大切

このように印紙税の課税範囲は意外と広い場合があります。

紙面の文書を送付する際には、その文書が課税文書に該当するのかしないのかを検討し、課税文書に該当する場合は印紙税の納付を忘れないようにしましょう。

※ご注意・免責※
課税文書に該当するかどうかは税務署の判断となりますので、当記事は、例示した上記文書が課税文書(17号文書)であることを断定・保証するものではございません。


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