「権限」と「権原」、2種類の”けんげん”を使い分ける

契約書を読んでいて、「権原」という言葉が使われているのをご覧になったことはありますか?

これは通常「けんげん」と読むのですが、同じ読み方をする「権限」の誤字であると感じてしまうかもしれません。

しかし、実は「権限」と「権原」には意味の違いがあり、契約書の中では使い分けられています。

「権限」とは

一般的によく使う側の漢字である「権限」とは、簡単に言えば特定の言動を行うことについて「権利を有しているか?」という意味になります。
もっと簡単に言えば、「できるのか?」という感じでしょうか。

複数の辞書の解説を基にもう少し正確に言うと、「他人に対して行うことができる権利・権力の範囲」といった意味であり、権利・権力などの「権」に「限りがある」、つまり特定の範囲が存在する、ということですね。

「権限がある」といった場合は「権利の範囲内である」、「権限がない」とは「権利の範囲外である」ということですので、例えば、法人との契約において、その法人が代表取締役ではなく営業担当者の名義で契約するような場合に

第○条

甲は、乙に対し、自己が本契約の締結に関して適切な権限を有することを保証する。

といった条項を設けることで、従業員である甲が、本来の契約締結権者(代表取締役)に代わってこの契約を締結することができることを乙に対して保証することになります。

また、

第○条

甲(委託者)は、乙(受託者)に対し、納品物に含める第三者ソフトウェアについての選択および採否の権限を付与するものとする。

という条項があった場合には、納品物の一部となるソフトウェアについて、受託者が「選択することができる」ということになります。

このように、契約や法律などによって、あることができると認められた能力のことを権限と言います。

「権原」とは

こちらの「けんげん」は、ある特定のことを行うことができる、法律上の原因、法的根拠のことを指します。

権限が「できるか、できないか」だとすると、権原は「できることの理由や根拠、なぜできるのか」というニュアンスになります。「権利」の「原因」といった感じでしょうか。
また、この原因によって取得した権利そのものを指す場合もあります。

例えば、購入した分譲マンションに住むことができるのは、法律で定められている「所有権(区分所有権)という権利」を有しているためであり、この権利(=所有権)が権原ということになります。

契約書においても、

第○条

甲は、◯◯を行うときは、予め適切な権原を 取得するものとする。

といった条項であれば、◯◯を行うことができる理由、つまり適切な契約であったり、法律によりそれを行うことができる場合はその根拠となるもの(資格など)を取得しなければならない、ということになります。

この「権原」は、契約書だけでなく、行政手続きの場面でもよく出てくる言葉です。例えば自動車を保有するときに必要となる車庫証明について、申請するときは自認書や賃貸借契約書などの「保管場所の使用権原を疎明する書類」を提示する必要があります。

なお、「権限」との混同を避けるために、音読する際は「権原」を「けんばら」と読むこともあります

このように、同じ「けんげん」と発する2つの言葉ですが、その意味には違いがあるため、契約書などを作成する場合において、適切に使い分けていきたいですね。